2012/09/09

YES YU CAN

ダルビッシュ投手について書こうと思いつつも機を逃し、気がつくとシーズンもすでに残りあと一ヶ月を切ってしまった。

慣れない場所での新たな挑戦は誰にとっても大変なことなのだ。あのダルビッシュにとってもそれは変わらなかった。

3月にアリゾナの練習試合で見たような投球がシーズンでも続いていた。変化球が多くストライクも入らない。結構いい投球をしているときでも、せっかく有利なカウントに追い込みながら、狙いすぎてか打者を過度に恐れてか、無駄に球数を消費した挙句歩かせてしまう。そして打たれる。ほとんど自滅である。

ダルビッシュは、何度もフォームを微調整しながらもがき続けた。上げた左足を二段モーションのように止めたり、脱力フォームで投げてみたりと。どれも見ていて不自然に感じられ、実際あまり上手く行かなかったようだ。それでも、たくさん取れる三振を励みになんとかかんとか投げ続けていたように見えた。最近の試合では、今まであまり投げていなかったフォークボールを使うようになったが、これはフォーシームやカットボールに慣れている大リーグの打者を打ち取るには効果的である。

ロン・ワシントンRon Washington監督も彼の投球に毎回やきもきしているのがベンチの映像から伺えた。それは自然と馴染みの光景となってしまった。業を煮やしたのは監督だけでなく、首脳陣、チームメイト、ノーラン・ライアンを始めとするオーナーたち、レンジャーズファン、そして私を含めたダルビッシュのファンだろう。ダルビッシュ有、なんと罪深い男であろうか。

ロン・ワシントンは素晴らしい監督である。ダルビッシュのことがよく分かっている。試合後のインタビューの内容から彼の頭の良さや寛容さが伝わってくる。「ダルビッシュ本来の投球は来シーズンまで見られないだろう」。確か7月か8月のコメントである。自滅のパターンがすっかり定着してしまった時期のこのコメント。実際にそう思ったのだろうがちょっと突き放したような冷たい言葉ではある。でも、この言葉でダルビッシュは少し楽になったのではないだろうか。彼は、監督だけでなくチーム全体からの忍耐強く暖かいバックアップに支えられているのである。

すっきりしない投球が多かったが、それでもシーズンを通して故障もなくほぼローテーションを守ったことは、監督をはじめとする首脳陣も高く評価しているはずだ。レンジャーズの先発投手陣の中でそれが出来た投手はほとんどいなかったのではないかな。「無事これ名馬」と言う言葉もある。長々と勝手なことを書き綴ってきたのを読むと、どれほどひどい成績だったのかと思ってしまうが、今日現在「14勝9敗」である。この数字を見れば、一年目としては十分立派な成績ではないか。ゴメン、ダルビッシュ。

さて、シーズンも終盤に入りダルビッシュもようやく少し落ち着いてきたように見える。私の心も落ち着いてきた。今日も登板しているのでインターネットで観戦していた。勝ち負けは付かなかったがなかなかナイスピッチングだった。ワシントン監督が、右手にカウンターを持ちダルビッシュの投球数を数えていたのがちょっと面白かった。

レンジャーズのスカウトは数年前からこの日本のエースを念入りにリサーチし、活躍できる確信を持ったので大金を払って獲得を決断したのだ。打者をねじ伏せる気持ちを持って本来の投球をすれば必ず大活躍が出来るはずだ。監督もファンもそれが分かっているので彼に大きな期待をするのである。うなるようなストレートで三振を取ったときに熱狂するのである。ファンはそれを見るために球場に足を運んでいるのである。

ダルビッシュの投げるストレートは時にノーラン・ライアンNolan Ryanのそれを彷彿させる。

Your fast ball sometimes reminds me of that of Nolan Ryan.


Dar. at Surprise Stadium in March


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