モロンの目抜き通り Calle Pozo Nuevo
Diego del Gastor の銅像がある公園
その小さな床屋は、昔からここにあり少なくとも三代は続いている感じの懐かしい匂いがする地味な店だった。店主は、モロンで生まれ育ち数年前に父親から店を継ぎ、これからもこの町を出ることなく一生この店を守っていくのだろうということが容易に想像できる、職人気質の、真面目で少し神経質そうなおじさん、というにはまだ若い旦那だった。
私が店をのぞいた時はおじいさんが髪を切っていた。ご年配の客が多いようだ。次の予約は入っていないようで、「30分後に来なさい」と言われ30分後に再び行った。若旦那一人でやっているようで髪を切る椅子も一台しかない。椅子の前に鏡があるが洗面台はない。切るだけで洗いはないようだ。
おじいさんの整髪が終わった。若旦那は一度店の奥に入りカードのようなものを持ってきておじいさんに渡している。メンバーズカードか何かだろうか。次は私の番で椅子のところに呼ばれた。スペイン語であまり細かい注文は付けられないのでとりあえず「短くしてください」と伝える。カット開始。若旦那は使いこんだマイ・ハサミを器用に使い、時間をかけて少しずつ慎重に私の髪を切って行く。アジア人がモロン(スペインどこでも)にいると明らかに外国人だとわかる。若旦那は、「どこから来たんだ?」「ここで何してるんだ?」などと話しかけてくるので、私も拙いスペイン語で答えた。
「スペインでどこを旅行した?」
「今回はセビージャ、アルコス、グラナダに行きましたよ。」
「#$%&△◎…には行ったか?」
何と言ったかよく聞き取れなかったので訊きなおしたがやはり聞いたことのないところだ。
「#$%&△◎…はいいところだよ。時間があったら行くといいよ。」
「そうですか。#$%&…ですね。」
若旦那は私の頭と鏡を交互に見ながら、まるで自分の持つ技術の粋を駆使して珍しい外国人客の頭に挑んでいるかの如く丁寧にそして粛々と髪を切って行く。のはいいのだが…さっきから自分の切り易いようにと、私の頭の位置を微調整するために、指先で何度も私の頭を小さく突いてくるので少し気持ちが悪くなってきた。
「#$%&△◎…はいいところだよ。行ったことないなら是非一度行ってごらん。」
「#%$&◎△…ですかぁ。」
よほど良いところらしい。カットが終わるまでにもう1、2度奨められた。
若旦那がハサミをしまう。ようやくカットが終わった。と思ったら、気になるところがあったのか、またハサミを取り出し微調整。今度はOK、と思いきやしまったハサミをまたまた取り出して再微調整。正にこだわりのある髪切り職人だ。これが何度か続きようやく終了。随分短くなったけど悪くはないかな。若旦那、腕は確かなようだ。ただ、髪型は「髪が頭皮にペッタリとくっつく感じ」に仕上げてある。スペインの流行なのかもしれない。
洗いはないのでもう終わり。若旦那はさっきのおじいさんの時と同じように、一旦店の奥に入りカードを三枚持ってきて私の眼前に提示し、微笑みながら私に一枚選ばせた。
カードの表 いや、やはりこちらが裏か |
裏というか表というか |
特に欲しいわけではなかったけれど、ここの人と同じ扱いをされているようでちょっと嬉しかったのと、珍しい外国人客にせっかくくれるという好意(というか私がどんな反応をするか見たいという好奇心かも)に応えてあげないのは少し悪い気がしたし、そして…なんか楽しいじゃあ~りまひょうえのこうようかくへ。(下をご参照ください。)一応三枚ともざっと見てから一枚を選んでお礼を言った。
小さい頃、床屋に行くと帰りにガムをくれてすごく嬉しかったのを思い出した。中学生になりガムをくれなくなった時、悲しくなると同時に、「子供じゃなくなったんだ」と感じたものだった。
消費税込みカード込みで9ユーロ弱、文句のつけようが無い。
なんとAKBではあ~りま… 地道に頑張っていたんですね