2011/08/26

ウドンタニの誘惑

ウドンタニ Udonthani はタイ東北部の町である。ここはうどんの名産地で、暑い季節には、その渓谷の急流を利用した大がかりな流しうどんを目玉とする様々な納涼イベントが開催され訪れる観光客の目を楽しませてくれる、という話は聞いたことがありません。この町はラオスとの国境に近く、ここからラオスの首都ビエンチャンまで国際線バスが運航している。昼過ぎにそのバスでビエンチャンから戻った。バンコクに戻るフライトまでかなり時間があるので、すぐに空港へ行かずに街中でタイ式マッサージをするか、髪を切りに行くかして時間をつぶすことを考えていた。

バスターミナルに近いところに、マッサージ屋と美容室が数軒ずつある。マッサージは昨日もやったし、できれば帰国前に物価の安いタイで髪を切って帰りたいと思っていたので、とりあえず美容室に入った。感じも悪くなく値段も手ごろだったのでそこに決める。美容室のお姉さんは背が高めでスタイルも良いきれいな人だった。彼女は十分通じる英語を話した。

ガイドブックによると、ベトナム戦争の時に、ここには米軍の秘密基地があったらしい。当時、町には多くのバーやレストランがあり、アメリカ軍兵士でに賑っていたようだ。終戦後、その店もアメリカ人も姿を消したとのこと。美容室の隣に二軒アメリカン風のレストランがあり、メニューにはステーキやフィッシュ&チップスなどの洋食が名を連ねていた。これらの店はその時の名残なのか。その辺りではご年配の白人も数人見かけた。もしかしたら終戦後もこちらに残った方々かもしれない。

お姉さんは私の髪をカットしながらいろいろ話しかけてきた。日本語の単語もいくつか知っている。

「あなた、髪の毛少ないネ。」
(百も承知だ)
「Sooner or later ですよ。仕方ありません。」

「OKAMAってわかる?」
「わかりますけど。」
「タイにはオカマがいっぱいいるの。」
「そうらしいですね。」
「オカマ、好きですか?あたしオカマなの。」
(エッ?)
「オカマ好きですか?」
「オカマは好きじゃあないけれどあなたのことは嫌いじゃないですよ。」

カミングアウトされるまでまったく気付かなかったけど、言われてみると確かにそう見える。でも言ってくれなければ最後まで女性だと疑わなかっただろう。その後はお互いの間にほとんど会話もなく時間が過ぎ去った。カットの仕上がりは上々だった。

美容室を出たあと隣のアメリカン風のレストランに入った。道路に面したテラスの席に座る。腹ごしらえに焼きそばを食べたがこれは最高においしかった。そこのおばちゃんに、タイ語のありがとう「コップンカー」の発音を笑われ直された。「コップンカーP」とPで終わるとのこと。おばちゃんは変な発音をする人を発見した感動を他の人と共有したかったのだろう。「ねぇ、来て御覧。この人、コップンカーだってぇ。カーって伸ばしてるよ。」と店の中から別の店員まで呼んで私を晒し者にしてくれた。おかげで今では完璧だよ。コップンカー。いい時間になったのでトゥクトゥクで空港に向かった。


ウドンタニのバスターミナル ラオス行きのバス

アメリカン風のレストランが二軒並ぶ
左の方に入った

焼きそばはどこの国で食べても無難です 

ベトナム・ラオス・タイはコーヒーが美味しい

頼むぞ運ちゃん コップンカー

 
スリルあったぜ コップンカー