2011/09/03

Bought a ticket to the West Coast 1

記録によると、1993年の夏、私はアメリカのロサンゼルスに語学留学した。学校はロサンゼルス郊外にある大学の敷地内にあった。キャンパス内にある大学のドミトリーに二週間滞在し英語を勉強した。目の前に広がる緑の芝生やスペインほどきつくない色の青空が作り出す、のどかなそして開放的な雰囲気は、私がアメリカの大学に持っていたイメージにほぼ合致した。

留学プログラムの初日はクラス分けのためのペーパーテスト。3、40人くらいの留学生が一教室に集められた。留学生の出身国は、日本・アジア諸国・ヨーロッパ諸国など。日本人が一番多かったように覚えている。
テスト開始。そのテストで人生が決まるわけではないが、こういう時は少しは緊張して真面目に取り組むのが一般的だと思っていた。開始後しばらくしてイタリア人の20歳くらいの男の子二人がヒソヒソ話し始めた。どうやら一人がもう一人に答えを聞いている模様。監督の黒人女性の先生が注意する。注意されて少し自重していた彼だが、しばらくしてまたコソコソやっている。というかその教室の全員が気づくほどあからさまだった。先生も驚いたようだったが、興奮を抑えるように落ち着いた声で再び注意。

先生 「あなた、私の言ったことがわからないの?人に訊いてはダメ。自力でやりなさい。」
イタリア人の男の子 「だって…全然わからないから友達に教えてもらってるんです。」

そう来るか、イタリア人。先生唖然。私も他のみんなも唖然。当の本人には悪びれた様子が少しもない。そのイタリア人の男の子は「自分は文法は苦手でテストはできないが話す方は大丈夫なので友達と同じ上級クラスに入りたかった」のだ。

全然わからないから友達に教えてもらってるんです

その時は「ふざけた奴」と思ったが、今考えてみると、ある意味大変素直な答えじゃないか。カンニングが見つかった日本人の口からは決して真顔で発せられることのないセリフだろう。彼は決してふざけていた訳ではないのだ。その後仕方なく注意を聞き入れカンニングをやめた彼は中の下のクラスに振り分けられたが、先生に頼んで二日目には友達と同じ上のクラスに移ってきた。そして自分の言葉通り、授業中、文法的な細かなミスに臆することなく、クラスの他の誰よりも積極的に話していたのだった。


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